・・・置いてもらって、そうして、その地獄の日々より三年まえ、顔あわすより早く罵詈雑言、はじめは、しかつめらしくプウシキンの怪談趣味について、ドオデエの通俗性について、さらに一転、斎藤実と岡田啓介に就いて人物月旦、再転しては、バナナは美味なりや、否・・・ 太宰治 「喝采」
・・・そうして、かかることについても、作家の人物月旦やめよ、という貴下の御叱正の内意がよく分るのですけれども私には言いぶんがあるのです。まだ、まだ、言いたいことがあると申し上げる所以なのです。いずれ書きます。どうぞからだを大事にして下さい。不文、・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・文学論は更に聞かれず、行くところ行くところ、すべて人物月旦はなやかである。 作家たるもの、またこの現象を黙視し得ず、作品は二の次、もっぱらおのれの書簡集作成にいそがしく、十年来の親友に送る書簡にも、袴をつけ扇子を持って、一字一句、活字に・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・その重要な社会的・階級的モメントをとばして、転向をよぎなくされたプロレタリア作家、その個々の人物月旦。良心と勇気の問題。マルクシズム誹謗をこととした。こんにち客観すれば、当時の転向問題の扱いかたの多くは、本質において検事局的な匂いをふくんで・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
出典:青空文庫