・・・ この意味からいっても、同人雑誌は極めて有意義のものです。新しい芸術上の運動も、そのはじめは、同志の綜合であり、同人雑誌を戦闘の機関としなかったものはなかったからです。 東京堂月報に拠ると昭和八年上半期の新刊書数は、実に二千四百・・・ 小川未明 「書を愛して書を持たず」
・・・自分で使うよりは友人に使ってもらう方がずっと有意義だという綺麗な気持、いやそれすらも自ら気づいてない、いわば単なる底ぬけのお人よしだからだとわかった。すると、もう誰もみな安心して平気であの人を利用するようになった。ところが、今まで人の顔さえ・・・ 織田作之助 「天衣無縫」
・・・ 骨董いじりは実にオツである、イキである、おもしろいに違いない、高尚に違いない、そして有意義に違いない、そして場合によっては個人のため社会のためになる事もあるに違いない。自分なぞも資産家でさえあればきっとすばらしい贋物や贋筆を買込で大ニ・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・このような珍しい現象の記録をそれが消えない今のうちに収集しておくのは、切手やマッチのレッテルの収集よりは有意義であろうと思っていたが、近刊の板垣鷹穂氏著「芸術的現代の諸相」の中に、このような収集の一部が発表されているのを見てなるほどと思うの・・・ 寺田寅彦 「カメラをさげて」
・・・それを追跡し分析し研究することはわれわれならびに未来の日本人にとってきわめて興味あり有意義であるのはもちろんであるが、そのような研究に意外な光明を投げるような発見の糸口があるいはかえってこうした草稿の断片の中に見いだされないとも限らないであ・・・ 寺田寅彦 「小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」」
・・・これが小なる時に等温線や等圧線は有意義となり、これに物理学上の方則が応用さるるなり。 今鋭敏なる熱電堆をもって気温を測定する時は、如何なる場合にも一尺を距てたる二点の温度は一般に同じからず。この差は数秒あるいは数分の不定なる週期をもって・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・それではほとんど唯一の有意義な方法と考えられるのは、現在日本人と隣接する民族の国語との関係を捜す事である。 こういう立場からすれば例えば土佐の地名を現在あるいは過去の日本語で説明しようとするよりは、むしろこれらの地名とアイヌ、朝鮮、支那・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・ 裏町の下水に落ちている犬を子供が助けてやった事実でも、自転車が衝突して両方であやまっていた実例でも適当に描かれれば有意義である。公園の花だよりでも動物園の鳥獣の消息でもなんらかの深い観察があれば何物かを読者に与える。それよりも起こるべ・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・ても、今のうちにこれらの滅び行く物売りの声を音譜にとるなり蓄音機のレコードにとるなりなんらかの方法で記録し保存しておいて百年後の民俗学者や好事家に聞かせてやるのは、天然物や史跡などの保存と同様にかなり有意義な仕事ではないかという気がする。国・・・ 寺田寅彦 「物売りの声」
・・・ さて抽象の結果として、時間と空間に客観的存在を与えると、これを有意義ならしむるために数というものを製造して、この両つのものを測る便宜法を講ずるのであります。世の中に単に数というような間の抜けた実質のないものはかつて存在した試しがない。・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
出典:青空文庫