出典:青空文庫
・・・この場合に結果を都合のよいようにこじつけたり、あるいは有耶無耶のうちに葬ったり、あるいは予期以外の結果を故意に回避したりするような傾向があってはならぬ。却って意外な結果や現象に対しては十分な興味をもってまともに立向かい、判らぬ事は判らぬとし・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・標題には浮世心理講義録有耶無耶道人著とかいてある。「何だか長い名だ、とにかく食道楽じゃねえ。鎌さん一体これゃ何の本だい」と余の耳に髪剃を入れてぐるぐる廻転させている職人に聞く。「何だか、訳の分らないような、とぼけた事が書いてある本だ・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・ 父親は、ケムブリッジ大学を卒業し、ひとから未来を属望され、自分も大いに活動する気でいたところが、彼の盲滅法な性質から、深い考えもなく或る私塾を開いている牧師の娘と恋に落ち、結婚したまま有耶無耶に六年間舅の助手で過してしまいました。舅の・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」