・・・ 民主主義の本質は、それは人によっていろいろに言えるだろうが、私は、「人間は人間に服従しない」あるいは、「人間は人間を征服出来ない、つまり、家来にすることが出来ない」それが民主主義の発祥の思想だと考えている。 先輩というものがある。・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・ ポルジイは会議の結果に服従しなくてはならない。腹を立てて、色々な物を従卒に打ち附けてこわした。ドリスを棄てようか。それは「絶待」に不可能である。少し用心深く言ったところで、「当分」不可能である。罷職になって、スラヴ領へ行って、厚皮の長・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・自分は同行者の温順な謙譲な人柄からその人がベデカの権威に絶対的に服従してベデカを通しての宮園のみを鑑賞する態度を感心もしまた歯がゆくも思った。しかし考えてみると、多くの自然科学の学生がその研究の対象とする自然を見るのに、あるいは教科書を通し・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・この事が彼らの不断の注意を自然の観察にふり向け、自然の命令に従順に服従することによってその厳罰を免れその恩恵を享有するように努力させる。 反対の例を取ってみるほうがよくわかる。私の知人の実業家で年じゅう忙しい人がある。この人にある時私は・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・自然と人間の方則に服従しつつ自然と人間を支配してこそほんとうの自由が得られるであろう。 暑さがなければ涼しさはない。窮屈な羈絆の暑さのない所には自由の涼しさもあるはずはない。一日汗水たらして働いた後にのみ浴後の涼味の真諦が味わわれ、義理・・・ 寺田寅彦 「涼味数題」
・・・金持になる人、なりたい人は、規律に服従せねばならない。あなた方の方は mechanical science の応用で、私どもの方は mental なのだから割がいいようだが、実は大変に損をしているのです。しかしあなた方は自由が少いが、私ども・・・ 夏目漱石 「無題」
・・・英米が之に服従すべきであるのみならず、枢軸国も之に傚うに至るであろう。 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・しかし翻って考えて見ると、子の死を悲む余も遠からず同じ運命に服従せねばならぬ、悲むものも悲まれるものも同じ青山の土塊と化して、ただ松風虫鳴のあるあり、いずれを先、いずれを後とも、分け難いのが人生の常である。永久なる時の上から考えて見れば、何・・・ 西田幾多郎 「我が子の死」
・・・畢竟記者は婚姻契約の重きを知らず、随て婦人の権利を知らず、恰も之を男子手中の物として、要は唯服従の一事なるが故に、其服従の極、男子の婬乱獣行をも軽々に看過せしめんとして、苟も婦人の権利を主張せんとするものあれば、忽ち嫉妬の二字を持出して之を・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・いわんや一国中になお幾多の小区域を分ち、毎区の人民おのおの一個の長者を戴てこれに服従するのみか、つねに隣区と競争して利害を殊にするにおいてをや。 すべてこれ人間の私情に生じたることにして天然の公道にあらずといえども、開闢以来今日に至るま・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
出典:青空文庫