・・・ 近ごろはまたそういう方法で、望遠鏡を使って空中の高いところの空気のむらを調べようとしている学者もいたようです。 次には熱い茶わんの湯の表面を日光にすかして見ると、湯の面に虹の色のついた霧のようなものが一皮かぶさっており、それがちょ・・・ 寺田寅彦 「茶わんの湯」
・・・写真機のピントガラスに映った自然や、望遠鏡の視野に現われた自然についても、時に意外な発見をして驚くのは何人にも珍しくない経験である。 芸術家としてどうすれば新しい見方をする事が出来るかという事は一概に云えない。それは人々の天性や傾向にも・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・しかしねらうのには水準器のついた望遠鏡か、これに相当する器械が必要であろうがそれについては聞いたことがない。 もう一つは浦戸港の入り口に近いある岩礁を決して破壊してはいけない、これを取ると港口が埋没すると教えたことである。しかるに明治年・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・如何なる強度の望遠鏡でも窺う事の出来ぬような遠い天体の上に起る些細な出来事も直ちに地球上の物体に有限な影響を及ぼすとなれば、人間の見た自然の運動にはおそらくなんらの方則を見出すことも出来ないだろう。否方則といえばただ偶然の方則が支配するばか・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・たださえ狭い眼界は度の強い望遠鏡でさらにせばめられる。これらの人のために、この大建築から離れた所に、小さな小亭が建てられている。ここへ来れば自分の住まっている建築が目ざわりにならずに、自由に四方が見渡される。しかるにせっかく建てたこの小亭が・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・また望遠鏡でよくみると、大きなのや小さなのがあって馬鈴薯のようです。 しかしだんだん夕方になりました。 雲がやっと少し上の方にのぼりましたので、とにかく烏の飛ぶくらいのすき間ができました。 そこで大監督が息を切らして号令を掛けま・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
・・・「大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると銀河は大体何でしょう。」 やっぱり星だとジョバンニは思いましたがこんどもすぐに答えることができませんでした。 先生はしばらく困ったようすでしたが、眼をカムパネルラの方へ向けて、「ではカムパ・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・僕実は望遠鏡を独乙のツァイスに注文してあるんです。来年の春までには来ますから来たらすぐ見せてあげましょう。」狐は思わず斯う云ってしまいました。そしてすぐ考えたのです。ああ僕はたった一人のお友達にまたつい偽を云ってしまった。ああ僕はほんとうに・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
・・・ 大きな望遠鏡が、高い台に据えて、海の方へ向けてある。後に聞けば、その凸面鏡は、エルリングが自分で磨ったのである。書棚の上には、地球儀が一つ置いてある。卓の上には分析に使う硝子瓶がある。六分儀がある。古い顕微鏡がある。自然学の趣味もある・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫