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・・・ おやじがこういうもんだから、一と朝起きぬきに松尾へ往った、松尾の兼鍛冶が頼みつけで、懇意だから、出来合があったら取ってくる積りで、日が高くなると熱くてたまんねから、朝飯前に帰ってくる積りで出掛けた、おらア元から朝起きが好きだ、夏でも冬・・・
伊藤左千夫
「姪子」
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・・・朝寒いので、床の中に入っていたけれど、朝起きの癖がついているので眤としていられなかった。起きても、羽織すら用意して来なかったので、内湯に行ったのである。広いという程でないけれど、澄み切った礦泉が湯槽に溢れている。足の爪尖まで透き通って見るこ・・・
小川未明
「渋温泉の秋」