・・・――このうすよごれた町からほとんど出たことのない三吉は、東京を知らないけれど、それまでの東京からはまだ大学生の田門武雄や、卒業して間がない三輪寿蔵や、赤松克馬や新人会本部の連中がやってきた。彼らはサンジカリズムないしアナルコサンジカリズムの・・・ 徳永直 「白い道」
・・・ 聞えないどころか、利平の全神経は、たった一枚の塀をへだてて、隣りの争議団本部で起る一切の物音に対して、測候所の風見の矢のように動いているのだ。 ナ、何を馬鹿な、俺は仮にも職長だ、会社の信任を負い、また一面、奴らの信頼を荷のうて、数・・・ 徳永直 「眼」
・・・而してそのこれを悦び、これを楽しむの情は、その慣れざるのはなはだしきにしたがってますます切にして、往々判断の明識を失う者多し。仏蘭西の南部は葡萄の名所にして酒に富む。而してその本部の人民にははなはだしき酒客を見ざれども、酒に乏しき北部の人が・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
・・・「第五十聯隊 聯隊本部」 歩哨はスナイドル式の銃剣を、向こうの胸に斜めにつきつけたまま、その眼の光りようや顎のかたち、それから上着の袖の模様や靴のぐあい、いちいち詳しく調べます。「よし、通れ」 伝令はいそがしく羊歯の森のなか・・・ 宮沢賢治 「ありときのこ」
・・・ ところがある日三十疋のあまがえるが、蟻の公園地をすっかり仕上げて、みんなよろこんで一まず本部へ引きあげる途中で、一本の桃の木の下を通りますと、そこへ新らしい店が一軒出ていました。そして看板がかかって、「舶来ウェスキイ 一杯、二厘半・・・ 宮沢賢治 「カイロ団長」
・・・ みんなは本部へ行ったり、停車場まで酒を呑みに行ったりして、室にはただ四人だけでした。(一月十日、玉蜀黍脱穀と赤シャツは手帳に書きました。「今夜積るぞ。」「一尺は積るな。」「帝釈の湯で、熊また捕れたってな。」「そうか。今・・・ 宮沢賢治 「耕耘部の時計」
・・・たとえば、みなさま御存知の経済安定本部――安本――あそこはたしかに抽象がすきです。その点で日本のわるい面の代表ですが、それは、新帰朝者のいうように、日本が思想とか主義とかいっていられる時代でない、ということになるでしょうか。 日本には、・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・電話をかけた立川国警署長は、「同様な意味の電話が国警本部から八時半頃あった」と語っている。その電話は八王子管理部から国警本部へ入ったものであるが、この電話の「入手径路は捜査されていない」。この電話でみれば、何処よりも先に国警本部が事件の起き・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 今日新聞に出た経済安定本部の経済白書をわたしたちは、どんなこころもちでよんだだろう。あの白書のなかにかかれている文句を、数字に直し、それを原型として一枚の生活図をひいたらば、それは果して人間生活という肉体に合うようなものだろうか。・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・今年の初、東京支部総会で婦人委員会は活動の便宜上本部婦人委員会と東京支部婦人委員会とに分れた。 僅か半年だが、婦人委員会の活動によって日本プロレタリア作家同盟東京支部における婦人同盟員の数は増した。日本プロレタリア文化連盟が、日本のプロ・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
出典:青空文庫