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ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。 広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗の剥げた、大きな円柱に、蟋蟀が一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路にある以上は、この男のほかにも、雨や・・・
芥川竜之介
「羅生門」
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・・・山城の朱雀野に来て、律師は権現堂に休んで、厨子王に別れた。「守本尊を大切にして往け。父母の消息はきっと知れる」と言い聞かせて、律師は踵を旋した。亡くなった姉と同じことを言う坊様だと、厨子王は思った。 都に上った厨子王は、僧形になっている・・・
森鴎外
「山椒大夫」