・・・ 男はとにかく、嫁はほんとうに、うしろ手に縛りあげると、細引を持ち出すのを、巡査が叱りましたが、叱られるとなお吼り立って、たちまち、裁判所、村役場、派出所も村会も一所にして、姦通の告訴をすると、のぼせ上がるので、どこへもやらぬ監禁同様と・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・そういう人々が村会議員になり勝手に戸数割をきめているのだ。 百姓達は、今では、一年中働きながら、饉えなければならないようになった。畠の収穫物の売上げは安く、税金や、生活費はかさばって、差引き、切れこむばかりだった。そうかといって、醤油屋・・・ 黒島伝治 「電報」
・・・ 青年団の寄合で、村会議員の清助に会った時、彼はざっくばらんに自分の意見を話した。「どんなもんだべ、俺、まだ足腰の立つうち柳田村さやるのがいいと思うが、あっちにゃ何でも姪とかが一戸構えてる話でねえか。――万一の時、俺一人で世話はやき・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・「時はあたかもウンカ問題で村会とこじれている」「やさしくなくとも僕はやる。我々の故郷に革命の詩をもたらすための開墾を」と、プロレタリア作家の農村における闘争的活動が開始される。 読者はこの作家の実行運動において最も拙劣な、機械的なオルグ・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
一九二〇年三月二十二日 郡山は市に成ろうとして居る。桑野は当然その一部として併合されるべきものである。村の古老は、一種の郷土的愛から、その自治権を失うことを惜しみ、或者は村会議員として与えられて居た名誉職を手放す事をな・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・見かけは小細工の上手そうな男に見えるけれ共、内心はそうではないらしい。村会議員の選挙、その他重だった事にはなくてはならない人になって居る。 召使より早く起き日の出ないうちに外囲りを掃いてから、乳搾りやその他のものを起すと云う事は知らぬ者・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・それに引き換え、勘次の父は村会を圧する程隆盛になって来た。そこで勘次の父は秋三の家が没落して他人手に渡ろうとした時、復讐と恩酬とを籠めたあらゆる意味において、「今だ!」と思った。そして、妻が反対したのに拘らず、彼は妻の実家を立て直して翌年死・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫