・・・南風崎、大村、諫早と通過する浜の黒々と濡れた磯の巖、灰色を帯びた藍にさわめいている波の襞、舫った舟の檣が幾本となく細雨に揺れながら林立している有様、古い版画のような趣で忘られない印象を受けた風景全体の暗く強い藍、黒、灰色だけの配合色は、若し・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・ひろ子は実験用テーブルをぐるりとまわって、仔細に千差万別の形をし、はり紙をつけられ、一見無雑作に、しかも極めて意味のある秩序をもって整理されている瓶や試験管の林立を眺めた。 重吉は、そうやって大テーブルのまわりを珍しそうにまわっているひ・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ 一節で圧殺されたインターナショナルの響と、労働者を囲んで林立していたステッキとを、忘れないだろう。〔一九三一年五月〕 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
出典:青空文庫