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・・・あの、黒檀で彫刻した鬼の面とでも云ったような感じのする外殻を噛み破ると中には真白な果肉があって、その周囲にはほのかな紫色がにじんでいたように覚えている。 公園と監獄、すなわち、今の刑務所との境界に、昔は濠があった。そこには蒲や菱が叢生し・・・
寺田寅彦
「郷土的味覚」
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・・・その下に美味な果肉がある。すなわち民族全体は、最も小さい子供から最も年長の老人に至るまで、その身ぶり、動作、礼儀などに、自明のこととして明白な差別や品位や優美などを現わしていた。王侯や富者の家族においても、従者や奴隷の家族においても、その点・・・
和辻哲郎
「アフリカの文化」