・・・ 関東大震後に私は首都の枢要部をことごとく地下に埋めてしまうという方法を考えたことがある。重要な官衙や公共設備のビルディングを地上百尺の代わりに地下百尺あるいは二百尺に築造し、地上は全部公園と安息所にしてしまう。これならば大地震があって・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・それはどんな社会だと云うと、国家枢要の地位を占めた官吏の懐抱している思想と同じような思想を懐抱して、著作に従事している文士の形づくっている一階級である。こう云う文士はぜひとも上流社会と同じような物質的生活をしようとしている。そしてその目的を・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・投者攫者二人は場中最枢要の地を占むる者にして最も熟練を要する役目とす。短遮は投者と第三基の中ほどにあり、打者の打ちたる球を遮り止め直ちに第一基に向って投ずるを務とす。この位置は打者の球の多く通過する道筋なるをもって特にこの役を置く者にして短・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・それは、東京書籍舘書目と云う一冊、飜刻智環啓蒙と云う何のことだか題では私などに見当もつかないもの、及、明治十五年前半期の福島警察枢要書類等である。 東京書籍館は、今の上野帝国図書館の前身である。いつ何処だのかは覚えないが、この書籍館時代・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
出典:青空文庫