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・・・形容の枯槁している事は、さっき見た時の比ではない。李はそれでも、いい話相手を見つけたつもりで、嚢や笥を石段の上に置いたまま、対等な語づかいで、いろいろな話をした。 道士は、無口な方だと見えて、捗々しくは返事もしない。「成程な」とか「さよ・・・
芥川竜之介
「仙人」
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・・・唖々子は既に形容枯槁して一カ月前に見た時とは別人のようになっていたが、しかし談話はなお平生と変りがなかったので、夏の夕陽の枕元にさし込んで来る頃まで倶に旧事を談じ合った。内子はわれわれの談話の奇怪に渉るのを知ってか後堂にかくれて姿を見せない・・・
永井荷風
「梅雨晴」