・・・家の道具も、たいてい廃物利用で間に合わせて居りますし、着物だって染め直し、縫い直しますから一枚も買わずにすみます。どうにでも、私は、やって行きます。手拭掛け一つだって、私は新しく買うのは、いやです。むだな事ですもの。あなたは時々、私を市内へ・・・ 太宰治 「きりぎりす」
・・・堂々たる飾窓のなかにある女の身のまわり品の染直しものだの、そういう情景には何か人の心情を優しくしないものがある。若い女のひとたちも日夜そういうものを目撃し、その気風にふれ、しかもその荒っぽさに心づかなくなって来るようなことがあれば、どこから・・・ 宮本百合子 「新しい美をつくる心」
・・・それを器用に染め直して、お前は女の子だからこんなことも覚えてお置きとは云わなかったところに、よかれあしかれうちの特徴があると思う。 どういう時代でも、抽象的な家庭教育などというものはなくて、畢竟は親たちの生きてゆく日々が家全体の空気とし・・・ 宮本百合子 「親子一体の教育法」
出典:青空文庫