・・・今年九歳になる、校内第一の綺麗な少年、宮浜浪吉といって、名まで優しい。色の白い、髪の美しいので、源助はじめ、嬢ちゃん坊ちゃん、と呼ぶのであろう?……「しょんぼりしている。小使溜に。」「時ならぬ時分に、部屋へぼんやりと入って来て、お腹・・・ 泉鏡花 「朱日記」
・・・ところが、事実あの人には五十銭の金もない時がしばしばであった。校内の食堂はむろん、あちこちの飯屋でも随分昼飯代を借りていて、いわばけっして人に金を貸すべき状態ではなかった。それをそんな風に金貸したろかと言いふらし、また、頼まれると、めったに・・・ 織田作之助 「天衣無縫」
・・・ わたしが昼間は外国語学校で支那語を学び、夜はないしょで寄席へ通う頃、唖々子は第一高等学校の第一部第二年生で、既に初の一カ年を校内の寄宿舎に送った後、飯田町三丁目黐の木坂下向側の先考如苞翁の家から毎日のように一番町なるわたしの家へ遊びに・・・ 永井荷風 「梅雨晴」
・・・アメリカでもプリンストン大学では、校内での運動を禁じた。ブックマン運動とよばれるようになっていたこの運動がアメリカで勢力を得てきたのは、第二次大戦中、ぬけめのないブックマン博士がこの運動を宗教問題から社会運動にきりかえて、労資協調を主張しは・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
出典:青空文庫