・・・建ったばかりの校舎、寄宿舎、労働者住宅などが快活に花園をかこんで窓々を開いている。男女の学生、未来の技師たちは、五年以上職場にいたものに限られている。 ロストフ市の郊外に新しくプロレタリア文化の壮麗な城のような「セルマシストロイ」の大工・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ガッチリした四十がらみの男で、ツルの曲った粗末な眼鏡をかけ、時によると、校舎の外の草っ原へ机と腰かけをもち出し、コンムーナ員の誰かをつかまえ、何かをきいてはそれを紙きれに書きつけている姿が見える。「五月の朝」の人々は、だんだんそういう光景を・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・六・三制になって、校舎がない、教科書が足りない、という声は三年越しです。小学校の課目に社会科という科が出来ました。社会科の時間に、子供たちの輿論調査が行われました。学校生活で一番希望されていることは、学用品・運動靴の配給や、給食をもっとほし・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・ こういう時代を思いかえすと、私は震災で焼けてしまった昔のお茶の水の校舎の庭のいろいろな隅や石段を、懐しさに堪えぬ心で記憶の裡に甦らす。女高師の方を、私たち附属の生徒は本校と呼んでいた。本校の建物の主な一棟は古風な赤い煉瓦の二階建で、正・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・ 冬の落日が木の梢に黄に輝く時、煉瓦校舎を背に枯草に座った私共が円くなって、てんでに詠草を繰って見た日を。 安永先生が浪にゆられゆられて行く小舟の様に、ゆーらりゆーらりと体をまえうしろにゆりながら、十代の娘の様な傷的な響で、日中に見・・・ 宮本百合子 「たより」
・・・ 美しい校舎や、森や。しゃんとした友達や、面白い学課や……。 古ぼけて歪み、暗くて塵だらけだった建物の中で、餓え渇いて、ガツガツと歯をならしていたあらゆる感情、まったくあらゆる感情とほか云いようのない種々様々な感情の渇仰が、皆一どき・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・売笑婦、浮浪児が増大するばかりで、六・三制の予算は削られ、校舎が足りないのに、野天で勉強する子供らのよこで、ダンス・ホールと料理屋はどんどん建ってゆきます。 すべてこれらの日々の不合理をいきどおり、不満を抱き、解決の道を求めている人民の・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
出典:青空文庫