・・・ もし階級争闘というものが現代生活の核心をなすものであって、それがそのアルファでありオメガであるならば、私の以上の言説は正当になされた言説であると信じている。どんな偉い学者であれ、思想家であれ、運動家であれ、頭領であれ、第四階級な労働者・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・その存在は、たとえ、小さな火であっても、いつか人生の核心を焼きつくすに足るからである。 毎日、幾何の人間が、深き省察のなかったがために、また自からを欺いたがために社会の空しき犠牲となりつゝあるか。そして、彼等の狂騒と私等は、この人生にと・・・ 小川未明 「名もなき草」
・・・それは正統派の恋愛論の核心をなすところの、あの「二つのもの一つとならんとする」願望のあらわれである。ペーガン的恋愛論者がいかに嘲っても、これが恋愛の公道であり、誓いも、誠も、涙も皆ここから出てくるのだ。二人の運命を――その性慾や情緒をだけで・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・大事なしかもかなり六かしい事柄の核心を平明にはっきり呑込ませる術を心得ているようであった。結局先生自身がその学問の奥底まではっきり突きとめて自分のものにしてしまっているせいだろうと思われた。日本の大学でもこうした講義がいちばん必要であろうと・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・しかし、次の事実は事件の核心に関係しているにもかかわらず、商業新聞には発表されていません。それはこういう事実です。事件当夜、立川市の警察署長は立川国警から電話をうけて、八時半頃三鷹附近で事件がおきるから注意して警戒にあたれと、命令をうけたと・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・あらゆる芸術の分野でごく少数の卓抜な選良たちは常に主観と客観とを二つのものに分けて扱う習俗を跨ぎこして、真実の核心に迫って行っている。主観的な時代には特にそのことの価値が考えられるのである。〔一九四一年五月〕・・・ 宮本百合子 「ヴォルフの世界」
・・・その感覚的生存感の核心を性に見出したのだった。 ローレンスの勇気にかかわらず、その勇気の本質は神経的であり、感覚の反乱であったことが、否定しがたく明瞭になって来る。こんにち、わたしたちが、かりに一人の未亡人の生活の上に、とざされた性の課・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・灯の下に集められた一つ一つの顔、大きいその肩、がんじょうなその手を、画家は、情景の核心にふれて、内部から描いている。明暗の技術も大胆で巧妙で、ケーテのリアリストとしての技術の高い峯が示されているのである。 興味あることは、この「織匠」に・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ 結婚の核心にあるそういうものを明確に見ようとしないで、結果の方からいわれるとすれば、その単純さでやはり観念的だと思うのだが、若い女性が割合あやしまずにそういう観念化された傾きにひき入れられて行くようなのはどうしてだろう。 この問い・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・何故ならソヴェト生産拡張五ヵ年計画の核心は、都会では重工業生産の増大であり、農村では農業の社会主義化以外にない。ソヴェト同盟の人口の過半数は農民によって占められている。農業における社会主義生産が高められ工業との階級的結合が行われなければ、全・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫