・・・た、この御堂の壇に、観音の緑髪、朱唇、白衣、白木彫の、み姿の、片扉金具の抜けて、自から開いた廚子から拝されて、誰が捧げたか、花瓶の雪の卯の花が、そのまま、御袖、裳に紛いつつ、銑吉が参らせた蝋燭の灯に、格天井を漏る昼の月影のごとく、ちらちらと・・・ 泉鏡花 「神鷺之巻」
・・・円福寺の椿岳の画 椿岳の大作ともいうべきは牛込の円福寺の本堂の格天井の蟠龍の図である。円福寺というは紅葉の旧棲たる横寺町の、本との芸術座の直ぐ傍の日蓮宗の寺である。この寺の先々住の日照というが椿岳の岳母榎本氏の出であったので、俗縁の・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・半円形に並べられている議席はまだ空虚で、一段高くしつらえられた議長席のヨーロッパ風な背高椅子や、そのすこし下の左右に翼をはっている大臣席など出場を待たせる雰囲気を醸しながらステインド・グラスの格天井からさして来る曇った冬の日光の底に静まりか・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
出典:青空文庫