引続きまして、梅若七兵衞と申す古いお話を一席申上げます。えゝ此の梅若七兵衞という人は、能役者の内狂言師でございまして、芝新銭座に居りました。能の方は稽古のむずかしいもので、尤も狂言の方でも釣狐などと申すと、三日も前から腰を・・・ 著:三遊亭円朝 校訂:鈴木行三 「梅若七兵衞」
・・・中略三囲の鳥居前より牛ノ御前長命寺の辺までいと盛りに白鬚梅若の辺まで咲きに咲きたり。側は漂渺たる隅田の川水青うして白帆に風を孕み波に眠れる都鳥の艪楫に夢を破られて飛び立つ羽音も物たるげなり。待乳山の森浅草寺の塔の影いづれか春の景色ならざる。・・・ 永井荷風 「向嶋」
出典:青空文庫