・・・「――打たば打たしめ、棒鱈か太刀魚でおうちあれ――」「――おのれ、また打擲をせいでおこうか――」「――ああ、いかな、かながしらも堪るものではない――」「――ええ、苦々しいやつかな――」「――いり海老のような顔をして、赤目・・・ 泉鏡花 「木の子説法」
・・・そして街から街へ、先に言ったような裏通りを歩いたり、駄菓子屋の前で立ち留まったり、乾物屋の乾蝦や棒鱈や湯葉を眺めたり、とうとう私は二条の方へ寺町を下り、そこの果物屋で足を留めた。ここでちょっとその果物屋を紹介したいのだが、その果物屋は私の知・・・ 梶井基次郎 「檸檬」
高札 いつも通る横丁があって、そこには朝鮮の人たちの食べる豆もやし棒鱈類をあきなう店だの、軒の上に猿がつながれている乾物屋だの、近頃になって何処かの工場の配給食のお惣菜を請負ったらしく、見るもおそろし・・・ 宮本百合子 「今日の耳目」
出典:青空文庫