・・・スウーと歯ぜせりをしながら、「天気は極上、大猟でげすぜ、旦那。」「首途に、くそ忌々しい事があるんだ。どうだかなあ。さらけ留めて、一番新地で飲んだろうかと思うんだ。」 六「貴方、ちょっと……お話がございます・・・ 泉鏡花 「鷭狩」
・・・それに毀れた方はざっとした菫花の模様で、焼も余りよくありませんが、こちらは中は金襴地で外は青華で、工手間もかかっていれば出来もいいし、まあ永楽という中にもこれ等は極上という手だ、とご自分で仰ゃった事さえあるじゃあございませんか。」「ウム・・・ 幸田露伴 「太郎坊」
・・・「や、かなわねえ。」 と言って笑い、鉢巻の結び目のところあたりへ片手をやった。「これ、あるか。」私は左手で飲む真似をして見せた。「極上がございます。いや、そうでもねえか。」「コップで三つ。」と私は言った。 小串の皿が・・・ 太宰治 「メリイクリスマス」
・・・ 煙草はたしか「極上国分」と赤字を粗末な木版で刷った紙袋入りの刻煙草であったが、勿論国分で刻んだのではなくて近所の煙草屋できざんだものである。天井から竹竿で突張った鉋のようなものでごしりごしりと刻んでいるのが往来から見えていた。考えてみ・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
出典:青空文庫