・・・文学報国会の大会では、軍人が挨拶をし、一九三一、二年代に、文学の純粋性といって、プロレタリア文学に極力抵抗した作家たちが、群をなして軍国主義御用の先頭に立ったのであった。 こういう文化上の悲劇、作家一人一人の運命についていえば目もあ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・一八四〇年に、フリードリッヒ・ウィルヘルム四世がプロシヤ王となり、学問の自由を極力押えつけはじめた。大学の自由は失われ、学内の統一を乱すという口実で、若い進歩的な哲学者たちは大学から追放されはじめた。政府御用の神学者シェリング等が筆頭となっ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ 時間と云うものに、極力抵抗した硬金属で作られて居ります。 そして、その上には、更に、燦い黄金をもって包まれて居るのでございます。 先生 ルネッサンス式の壮大な、単純と優雅とを調和させた大建築の前面に、厳然と立つアルマ・マタ・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・一九三三年プロレタリア文学運動が圧殺されて後、反ファシズムの運動として世界におこった人民戦線の活動が日本に伝えられたとき、治安維持法の脅威によって、日本における人民戦線の紹介者は、極力、「社会性を問題としない」人民戦線にとどめようとしました・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・然し、右翼的日和見主義との闘争は、作家同盟の第五回大会決議が極力警告しているとおり、プロレタリア文学をレーニン的段階へ押しすすめるために欠くべからざる一つの条件である。そうとすれば、われわれ自身に対してもこの監視を怠ることは許されない。・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ どのブルジョア国でもゆきづまった資本家どもは死物狂いになって、極力、労働者・農民の反抗を根こそぎにぶっ潰そうとかかっている。このファッシズムと闘って、たとえばドイツではこの十ヵ月間に十一万人の労働者が投獄された。負傷者はおよそ二十三万・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
・・・ このように、歴史の中心課題のありどころを極力抹殺し、見えないようにして過されて来た十数年間を思えば、日本のインテリゲンツィアの、今日おかれている苦悩の理由もよく諒解されると思う。日本のインテリゲンツィアは、インテリゲンツィアとして知る・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・日本の権力は植民地であった朝鮮の人民の間からすぐれた政治、経済面の活動家が、成長してくることを極力ふせいだ。そして、いわゆる文化面といっても朝鮮人民の言葉と思想感性のおのずから主張される文学よりも、歌や踊りへよりたやすい才能のはけくちを与え・・・ 宮本百合子 「手づくりながら」
・・・ 若し、我々が、人生を只食って生きて安わして行く為のみの実在と認めないならば、種々偶然的な境遇の力に支配されて、大切な人間の核心を失って行くものを、已を得ぬこととして傍観する自他の不誠実だけは、極力排けて行きたく思うのです。 性格の・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・医師は極力静養を求める。ナイチンゲールにとって、どうして今休養などをとっていられよう。今こそ好機が到来したのだ。鉄は熱い中にこそ打つべきだ。長椅子の上であえぎながら、彼女は報告を読み、手紙を口述し、心悸亢進の合間には熱病的な冗談をとばした。・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
出典:青空文庫