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・・・薄白い路の左右には、梢から垂れた榕樹の枝に、肉の厚い葉が光っている、――その木の間に点々と、笹葺きの屋根を並べたのが、この島の土人の家なのです。が、そう云う家の中に、赤々と竈の火が見えたり、珍らしい人影が見えたりすると、とにかく村里へ来たと・・・
芥川竜之介
「俊寛」
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・・・また○○の木というのは、気根を出す榕樹に連想を持っていた。それにしてもどうしてあんな夢を見たんだろう。しかし催情的な感じはなかった。と行一は思った。 実験を早く切り上げて午後行一は貸家を捜した。こんなことも、気質の明るい彼には心の鬱した・・・
梶井基次郎
「雪後」