・・・私はそのお方とは、いつか詩人の会でたったいちどちらと顔を合せた事があるくらいのもので、個人的な恩怨は何も無かった筈でございますのに、どうして私のようなあるか無きかの所謂ルンペン的存在のものを特に選んで槍玉に挙げたのでございましょうか、やっぱ・・・ 太宰治 「男女同権」
・・・ただ、ただ、レッド・テエプにすぎざる責任、規約の槍玉にあげられた鼻のまるいキリスト。「温度表を見て下さい。二十日以降、注射一本、求めていません。私にも、責任の一半を持たせて下さい。注射しなけれあいいんでしょう?」「いいえ、保証人から全快まで・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・その歌詞の中には、先生の名も他の多くの先生がたと一度に槍玉にあげられていた。そうして「いざあばれ、あばあれ」というのがこの愉快な歌のリフレインになっていたのである。 第二学年の学年試験の終わったあとで、その時代にはほとんど常習となってい・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・それでも頑強に応じないと、あとから立つ人の演説の中で槍玉にあげられる。迷惑な事である。 あれはともかくもやはり西洋人のまねから起こった事には相違ない。不幸にして西洋の社交界へ顔を出した事がないし、出たところで言語がよくわからないから、西・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・はいわゆる文壇の内幕をあばき、私行を改め、代作横行を暴露し、それぞれの作家を本名で槍玉にあげたことを、文学的意味ではなく、文壇的意味において物議をかもし出したのであった。 ある作家、編輯者はこの作に対して公に龍胆寺に挑戦をしたり、雑誌の・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫