・・・ 私達の希望する児童文学は、子供の世界のごとく、純情、素朴にして、その内部に、自から発達の機能を有する、純一の文学でなければならない。この意味において、既成の感情、常識を基礎とする、しかも廃頽的な大人の文学と対立するものでなければな・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・序に頭の機能も止めて欲しいが、こればかりは如何する事も出来ず、千々に思乱れ種々に思佗て頭に些の隙も無いけれど、よしこれとても些との間の辛抱。頓て浮世の隙が明いて、筐に遺る新聞の数行に、我軍死傷少なく、負傷者何名、志願兵イワーノフ戦死。いや、・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・古き型の常套的レディは次第に取り残され、新しき機能的なレディの型が見出されつつある。青年学生の青春のパートナーとして、私が避けたいのは媚を売る女性のみである。 私の経験から生じる一般的助言としては、「恋愛に焦るな」「結婚を急ぐな」と私は・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・死は休なりとか、死は静なりとか、死は動力の不存在なりとか、死は自営的機能の力が滅して他の勢力のみ働らく場合なりとか、色々の理屈をつける奴もあるが、第一困る事には死という事は世界にひとつもない。君だッて死にはしない。僕だッて死にはしない。関羽・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・これはたしかにひなと親鳥とではその生理的機能にそれだけの差があることを意味するのではないかと思われる。 鴨羽の雌雄夫婦はおしどり式にいつも互いに一メートル以内ぐらいの間隔を保って遊弋している。一方ではまた白の母鳥と十羽のひなとが別の一群・・・ 寺田寅彦 「あひると猿」
・・・花の植物生理的機能を学んで後に始めて充分に咲く花の喜びと散る花の哀れを感ずることもできるであろう。 人間の文化が進むにつれて、文学も進化しなければならないはずである。すべての世間の科学的常識が進んで行く世の中に文学だけが過去の無知を保守・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・しかし中毒であれば、飲まない時の精神機能が著しく減退して、飲んだ時だけようやく正常に復するのであろうが、現在の場合はそれほどのことでないらしい。やはりこの興奮剤の正当な作用でありきき目であるに相違ない。 コーヒーが興奮剤であるとは知って・・・ 寺田寅彦 「コーヒー哲学序説」
・・・しかも、自分の場合にはそれらの詩がみんな自分の肉体の生理的機能となんらかの密接な関係をもっていたような気がする。 三 どうも自分の詩の世界は自分のからだの生理的機能と密接にからみ合っていて直接な感官の刺激によって・・・ 寺田寅彦 「詩と官能」
・・・の効能に関する本格的な研究に着手し、ある黒焼きを家兎に与えると血液の塩基度が増し諸機能が活発になるが、西洋流のいわゆる薬用炭にはそうした効果がないという結果を得たということが新聞で報ぜられた。自分の夢の実現される日が近づいたような喜びを感じ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ 宇宙線が脳を通過する間に脳を組成するいろいろな複雑な炭素化合物の分子あるいは原子の若干のものに擾乱を与えてそれを電離しあるいは破壊するのは当然の事であるが、その電離または破壊が脳の精神機能の中枢としての作用になんらかの影響を及ぼすこと・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
出典:青空文庫