・・・子供のない彼女はひとりになると、長火鉢の前の新聞をとり上げ、何かそう云う記事はないかと一々欄外へも目を通した。が、「今日の献立て」はあっても、洋食の食べかたなどと云うものはなかった。洋食の食べかたなどと云うものは?――彼女はふと女学校の教科・・・ 芥川竜之介 「たね子の憂鬱」
・・・抜き書きというのは、言うまでもなく教科書中の主要の点を抜き書きして、教科書の欄外などへそのまま書き抜いておくのである。同じ教科書の中でも、動物、植物、鉱物、地理、歴史、化学のごとき、主として暗記すべきものは、こうしたほうが得なように思う。ち・・・ 寺田寅彦 「わが中学時代の勉強法」
・・・ 〔欄外に〕插話。 講演会。日米週報社より、本田が広告を見て訪ねて来たことをしらす。一月 八日 セントルーク退院。 九日 の朝本田来る、みじめな様子。 の夜、よそに招かれた父を待って、マル・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・〔欄外に〕本のことはよく分りました。こんどは忘れっこなし。 十月十一日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 長野県上林温泉より〕 十月十一日、日曜日、きょうの午後、この宿の裏の方に新しく建った二階の方へ移り、やっと落付きました。十日・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・〔欄外に〕 昨年会ったときから見ると すっかり壮年的になっている。 三十四歳。○「夜店の大学を出たって平気ですよ」○「つよい一面によわい」「病気しませんねえ、相変らずコマコマしているが」 岩手の農・・・ 宮本百合子 「SISIDO」
・・・〔欄外に〕バアの女給。十二時頃 tea Room でポタージュをたべ トウストをたべる。ヴィンナ、トウストマダムという女 朱 赤と薄クリームの肩ぬき的な洋装、小柄二十四五位 夕方五時すぎ。電車道のところを・・・ 宮本百合子 「情景(秋)」
・・・〔欄外に〕 ロシア人と茶。午後三時茶がわく。シュウイツァールの男がクルシュクールもってそっと歩いて行く。エイチャイピーラの唄=事務所の茶=クベルパルトコンフェレンスのトリビューンにもさじのついた茶のコップの写真が出た。 ・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・〔欄外に〕五十年来という大雨○小野 酒をのむ、色白、一寸腰のかがめかたなどくにゃりとし「おやかましゅう」という。○山岡 皮膚のうすい黒い肥り、髪濃く、まつ毛も黒く濃い。動物、舌たるいような口のききよう。発句、釣、・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・ 時々三対目の後脚をいかにもかゆそうにこすり合わせた、見て居て、自分もくすぐったくなる程〔欄外に〕 よく見るとうるしの刷目のようなむらさえ頭や翅にあり、一寸緑色がぼやけて居るあたりの配色の美、 田舎の寺の・・・ 宮本百合子 「一九二七年八月より」
・・・訪らしい広告 御待合開業 今回各位の御同情により二月十八日より 御待合並にうどん店 開業致し親切丁寧を旨として大勉強仕候間御引立の程願上候、 うどん/きそば入仙〔欄外に〕君が……かりねの床 ・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
出典:青空文庫