・・・ 一段高くなっている舞台は正方形であるらしい。四隅の柱をめぐって広い縁側のようなものがある。舞台の奥に奏楽者の席のあるのは能楽の場合も同様であるが、正面に立てた屏風は、あれが方式かもしれないが私の眼にはあまり渾然とした感じを与えない。む・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・敷石道の左右は驚くほど平かであって、珠の如く滑かな粒の揃った小石を敷き、正方形に玉垣を以て限られた隅々に銅の燈籠を数えきれぬほど整列さしてある。第二の門内に這入ると地盤が一段高くしてあって第一と同じ形式の唯だ少しく狭い平地は直様霊廟を戴く更・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・いろはには正方形にして十五間四方なり。勝負は小勝負九度を重ねて完結する者にして小勝負一度とは甲組が防禦の地に立つ事と乙組が防禦の地に立つ事との二度の半勝負に分るるなり。防禦の地に立つ時は九人おのおのその専務に従い一、二、三等の位置を取る。但・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・の筆者であるこの作者に、愈々切実に「円は正方形をいくつもいくつもきちんと積み重ねて行った後にはじめて出来るように、正義を越えた尊い心境に至る前には、人は幾度か正義を叫ばなければならないもので」あることを思わせている筈である。〔一九三七年六月・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫