・・・が、芸術化の過程が一条件としてもっている諸現象の評価、そのより特徴的な方向の取捨選択の必要を、「現実を歪曲する」権利という表現で強調していることは、理解の混乱をひきおこすと思う。更に、「ルポルタージュなるものは『物が人をうごかす』という唯物・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・レーニンの言葉を引用して、歴史の事実をゆがめ、労働者階級の任務を歪曲した議論がまとめられていることに、多くの人が驚きました。 知識欲のさかんな若い人々、レーニンが云っているように向上心にもえ、階級の武器として、あらゆる知識をもちたいと思・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・民主主義文学運動がはじまってから蔵原惟人、小林多喜二、宮本顕治にふれて、当時の検事局的に歪曲された「政治的偏向」批判をそのままくりかえし、これらの人々の活動の積極面――プロレタリア文学運動の成果の抹殺が試みられた。それは、客観的には、非民主・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ 更に、新聞も御用大新聞に整理することに成功し『くにのあゆみ』から『民主主義』読本を文部省が発行できるように日本の民主化が歪曲されて来るにつれて、吉田茂は、とうとう、日本人の大部分が満足していない国会を、外国の新聞がほめている、というよ・・・ 宮本百合子 「「委員会」のうつりかわり」
・・・そして、大森氏によって指摘されているこの一種の現実歪曲の根源はと見れば、それは微妙にも当の大森氏が立派な思想は生活とはなれていてもそれとして人々を益すると云っている、微塵悪意のない、だがそこから実際には沢山の抽象論、機械的解釈を発生させる罅・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・社会主義リアリズムの問題さえもその階級的な要点を歪曲されたまま読まれるしかなかった。 民主主義文学運動という声とともに、一部から反小林多喜二論は、反特攻隊精神と同性質のものであるかのように繁昌し、それとのたたかいに忙殺された。民主主義文・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・同時に、まだ社会主義に到達していない人民が、自分たちの重圧である半封建的なものと闘わなければならないとき、資本主義勢力が民主的進展の推進力であるよりも急速にその歪曲作用を与えているとき、社会主義的リアリズムの課題は、もう一度歴史の手前のとこ・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・木々高太郎氏の作品では、殺すという行動を機械的に殺しの操作それ自体に切りはなしてしまって、比叡子の心持を、合理性そのものの解釈においてさえ歪曲されている合理主義で批判している。概括して二つのいずれが、よりリアリスティックな誠意をもった現実把・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・例えば作家研究を飽く迄文学の中で行おうとする正常な意企をもつ評論家が作家のタイプに関心をひかれて、タイプの共通にかかわらずそこに模する本質的なものについて余り注目を深めなかったり、歪曲された功用論への是正としての芸術本質論の方法において、文・・・ 宮本百合子 「昭和十五年度の文学様相」
・・・という連載物に登場する人物にさえ時代の空気が流れ入っていることは、一つの例に過ぎず、当時は通俗小説の中にさえも新しさの象徴として時代的な青年男女の動き、心持ち、理論などと云うものがさまざまに歪曲されながら装飾として或はあやとして取り入れられ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫