-
・・・物置きに入れられてからの三毛のはげしい肉体と精神の劇動がこの死産の原因になったのではないかと疑ってみた。この疑いはいつまでも私の心の奥のほうに小さな傷あとのようになって残っている。桃の木の下に三匹の同胞とともに眠っているあの子猫に関する一種・・・
寺田寅彦
「子猫」
-
・・・ 事変になってから乳児の死亡率の高くなったことや若い母の流産死産のふえたことも、やはり人々の注意をひいたことであった。 婦人は社会的に働いても永続性がないからと、女性の能力の低さの一つとしていわれるけれども、この事の一面には、働かせ・・・
宮本百合子
「女性の現実」