・・・そして「殖産」という流行語にかぶれてついに破産してしまった。 桂家の屋敷は元来、町にあったのを、家運の傾むくとともにこれを小松山の下に運んで建てなおしたので、その時も僕の父などはこういっていた、あれほどのりっぱな屋敷を打壊さないでそのま・・・ 国木田独歩 「非凡なる凡人」
・・・ 以上に述べたとは少しく異なった殖産事業の方面においても、将来非常に有望な物理学応用の新区域があるように思われる。先ず農業の方面ではつとに農芸物理学という学科が出来ているくらいであるが、今後まだどれだけ発展するか予期し難いように見える。・・・ 寺田寅彦 「物理学の応用について」
・・・ あるいはたまたま豊に生活して多少の余財ある者もあるべしといえども、その財は、本人が教育上に授けられたる芸能を天下の殖産社会に活用して得たる財にはあらずして、幸に官途に用いられ、さしたる用もなけれども、きまりの俸給に衣食して、少々ずつそ・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」
・・・ 外国と交際を開きて独立国の体面を張らんとするには、虚実両様の尽力なかるべからず。殖産工商の事を勉めて富国の資を大にし、学問教育の道を盛んにして人文の光を明らかにし、海陸軍の力を足して護国の備えを厚うするが如き、実際直接の要用なれども、・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫