・・・そしてそれに応じるような段取りで話をすすめた。彼は戦争をすることなどは全然秘密にしていた。 十五分ばかりして、彼は、二人の息子を馭者にして、ペーターが、二台の橇を聯隊へやることを承諾さした。「よし、それじゃ、すぐ支度をして聯隊へ行っ・・・ 黒島伝治 「橇」
・・・なるやも知れぬという、けち臭い打算から、私は友人を屋外に誘い出し、とにもかくにも散策を試み、それでもやはり私の旗色は呆れる程に悪く、やりきれず、遂には、その井の頭公園の池のほとりの茶店に案内するという段取りになるのであった。この茶店の床几の・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・仲間、――馬場が彼の親類筋にあたる佐竹六郎という東京美術学校の生徒をまず私に紹介して呉れる段取りとなった。その日、私は馬場との約束どおり、午後の四時頃、上野公園の菊ちゃんの甘酒屋を訪れたのであるが、馬場は紺飛白の単衣に小倉の袴という維新風俗・・・ 太宰治 「ダス・ゲマイネ」
・・・えて北上し、秋田を過ぎ東能代駅で下車し、そこから五能線に乗りかえ、謂わば、青森県の裏口からはいって行って五所川原駅で降りて、それからいよいよ津軽鉄道に乗りかえて生れ故郷の金木という町にたどり着くという段取りであったのですが、思えば前途雲煙の・・・ 太宰治 「たずねびと」
・・・こうしておいて後にそろそろ被告の運命を明るい方へ導くために、今度は有利な側の証人を招集する段取りになる。共犯嫌疑者田代公吉は弁護士梅島君のところに、不都合にも、「かくまわれ」ていて、そうして懸命に彼の社長殿と夕刊嬢とを捜している。雪の日のミ・・・ 寺田寅彦 「初冬の日記から」
出典:青空文庫