・・・ハンケチも、布団も、読んでいる本も、みんなその薫がいたします。毎日朝早く妹のアガアテが部屋に這入って参って、にっこり笑うのでございます。アガアテはいつでもわたくしの所へ参ると、にっこり笑って、尼の被物に極まっている、白い帽子を着ていまして、・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
・・・世間の人は毎日毎日彼女を夢に見てあくがれているように見えた。 ヘルマン・バアルは露都で得た芸術の酔いごこちをフランクフルト新聞に披瀝して、神のごときデュウゼをドイツに迎えようと叫んだ。これが導火線となって翌九二年デュウゼは初めてウィ・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫