・・・それが何故か遠藤には、頭に毫光でもかかっているように、厳かな感じを起させました。「御嬢さん、御嬢さん」 遠藤は椅子へ行くと、妙子の耳もとへ口をつけて、一生懸命に叫び立てました。が、妙子は眼をつぶったなり、何とも口を開きません。「・・・ 芥川竜之介 「アグニの神」
・・・「どうぞ聖者の毫光を御尊敬なさると同じお心持で、勝利を得たものの額の月桂冠を御尊敬なすって下さいまし。」「どうぞわたくしの心の臓をお労わりなすって下さいまし。あたたの御尊信なさる神様と同じように、わたくしを大胆に、偉大に死なせて下さ・・・ 著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外 「女の決闘」
・・・「どうぞ聖者の毫光を御尊敬なさると同じお心持で、勝利を得たものの額の月桂冠を御尊敬なすって下さいまし。」「どうぞわたくしの心の臓をお労わりなすって下さいまし。あなたの御尊信なさる神様と同じように、わたくしを大胆に、偉大に死なせて下さ・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・ 安寿はけさも毫光のさすような喜びを額にたたえて、大きい目をかがやかしている。しかし弟の詞には答えない。ただ引き合っている手に力を入れただけである。 山に登ろうとする所に沼がある。汀には去年見たときのように、枯れ葦が縦横に乱れている・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
・・・この時庄兵衛は空を仰いでいる喜助の頭から毫光がさすように思った。 ―――――――――――――――― 庄兵衛は喜助の顔をまもりつつまた、「喜助さん」と呼びかけた。今度は「さん」と言ったが、これは充分の意識をもって称呼を改・・・ 森鴎外 「高瀬舟」
・・・それに反してあの写真の男の額からは、才気が毫光のさすように溢れて出ているでしょう。どうしてもわたくしのどこをあなたが好いて下さるか分からなかったのです。そこでわたくしは必死になってあの写真と競争してみる気になったのです。 女。それも分か・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「最終の午後」
出典:青空文庫