・・・ 北米のような大陸で、ことに南北の気流の比較的自由な土地はこの現象の生成に都合が好さそうに思われる。いくら米国でもこの天象を禁止し排斥する事は出来ないので、その予報の手がかりを研究しているのである。 我邦におけるこれらの現象の記録は・・・ 寺田寅彦 「凍雨と雨氷」
・・・ 壁の前面に肉片を置いたときにでも、その場所の気流の模様によっては肉から発散する揮発性のガスは壁の根もとの鳥の頭部にはほとんど全く達しないかもしれない。また、ごく近くに肉の包みをおかれて鳥がそれをついばむ気になったのは、嗅覚にはよらずし・・・ 寺田寅彦 「とんびと油揚」
・・・また微弱な気流でもその落下の方向速度を変える事は明白である。しかるにこれらの温度や気流等はまた室内のみならず室外全宇宙の現象の影響を受けぬ訳には行かぬ。なおこのような影響を及ぼすものを列挙すれば巻を更えても尽す事は出来まい。 それならば・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・その細かな火山灰が正しく上層の気流に混じて地球を包囲しているな。けれどもそれだからと云って我輩のこの追跡には害にならない。もうこの足あとの終るところにあの途方もない爬虫の骨がころがってるんだ。我輩はその地点を記録する。もう一足だぞ。」大・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・そして、こういう作家の態度は、当時の気流によって、その作家たちの正直さ、人間らしさ、詐りなさの発露という風にうけとられ、評価されたのである。 日本におけるプロレタリア文化・文学運動の全体関係においての敗北の時期にあたって、当時の多くのプ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・それにもかかわらず、一定の時がたつと、季節のちがった気流がどこからか流れ込んで来るように、私の帰るべきことが知らされて、そして若い不器用な私は帰って来るのであった。 こういう距離は何だったのだろう。 追々明治初期の文学の歴史を知るよ・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・私は流れる気流とともにある。春のように、個々の樹の根から萌え出るものでないことを思い知らされ、直感する。心を鎮め、自然を凝視すると、あらゆる不透明な物体を徹して、霊魂が漂い行くのを感じずにはいないだろう。それも、春始めの、人間らしく、或は地・・・ 宮本百合子 「透き徹る秋」
・・・狭い文壇的気流の匂いだの、ゴシップだの、競争だの、いりくんだ利害関係だのから、作家同士或は作家、編輯者との間からは、世が世智辛くなるにつれ、率直さや朗らかさや、呵々大笑的気分は消失して来ているであろう。その内輪で、どちらかと云えば神経質な交・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・ 歴史が、ほかならぬ今日の、この時の、この私たちの感情と行動にもこもってそのものとして生きているという感覚がはっきりしないことは、昨今のように世界の歴史が強烈に旋回して、日常の気流が至って静穏を欠いている時期、とかく私たちの現実の歴史感・・・ 宮本百合子 「文学のディフォーメイションに就て」
・・・ 日本代表の有島氏は、ヴェノスアイレスの第十四回大会へ島崎藤村氏と共に出席したのだから、恐らくこの一年の間に世界の空気がどのように動き、対立する気流はどのように深化したかを、些かは身に添えて感じていられるであろう。日本における外国文学翻・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
出典:青空文庫