-
・・・大きな水柱を揚げながら、「定遠」の沈没する所もあった。敵の赤児を抱いた樋口大尉が、突撃を指揮する所もあった。大勢の客はその画の中に、たまたま日章旗が現れなぞすると、必ず盛な喝采を送った。中には「帝国万歳」と、頓狂な声を出すものもあった。しか・・・
芥川竜之介
「奇怪な再会」
-
・・・呆気に取られて、ああ、綺麗だ、綺麗だ、と思ううちに、水玉を投げて、紅の※を揚げると、どうでしょう、引いている川添の家ごとの軒より高く、とさかの燃えるように、水柱を、颯と揃って挙げました。 居士が、けたたましく二つ三つ足蹈をして、胸を揺っ・・・
泉鏡花
「半島一奇抄」