・・・ 河豚の皮の水鉄砲。 蘆の軸に、黒斑の皮を小袋に巻いたのを、握って離すと、スポイト仕掛けで、衝と水が迸る。 鰒は多し、また壮に膳に上す国で、魚市は言うにも及ばず、市内到る処の魚屋の店に、春となると、この怪い魚を鬻がない処はない。・・・ 泉鏡花 「茸の舞姫」
・・・たので、里見の天海たる丶大や防禦使の大角まで引っ張り出して幕下でも勤まる端役を振り当てた下ごしらえは大掛りだが、肝腎の合戦は音音が仁田山晋六の船を燔いたのが一番壮烈で、数千の兵船を焼いたというが児供の水鉄砲くらいの感じしか与えない。扇谷家第・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・「こまと、水鉄砲と、まりと、ろうせき……。水鉄砲は、いつまでも貸しておいてあげるから……。」「ほほほほ、良ちゃん、私、そんなもの、なんにするのよ……。」と、いって、お姉さんは、良ちゃんのほっぺたをぷっと吹きました。 良ちゃんは、・・・ 小川未明 「小さな弟、良ちゃん」
・・・ 別製アイスクリーム、イチゴ水、レモン水、冷やし飴、冷やしコーヒ、氷西瓜、ビイドロのおはじき、花火、水中で花の咲く造花、水鉄砲、水で書く万年筆、何でもひっつく万能水糊、猿又の紐通し、日光写真、白髪染め、奥州名物孫太郎虫、迷子札、銭亀、金・・・ 織田作之助 「道なき道」
出典:青空文庫