・・・尤も時には氷砂糖にも似ている。 ポオ ポオはスフィンクスを作る前に解剖学を研究した。ポオの後代を震駭した秘密はこの研究に潜んでいる。 森鴎外 畢竟鴎外先生は軍服に剣を下げた希臘人である。 ・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・空はまるで新らしく拭いた鏡のようになめらかで、青い七日ごろのお月さまがそのまん中にかかり、地面はぎらぎら光って嘉ッコは一寸氷砂糖をふりまいたのだとさえ思いました。 南のずうっと向うの方は、白い雲か霧かがかかり、稲光りが月あかりの中をたび・・・ 宮沢賢治 「十月の末」
わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。 またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅・・・ 宮沢賢治 「『注文の多い料理店』序」
・・・若い自分が従妹と、そこに祖母が隠して置いた氷砂糖を皆食べて叱られた。その洋画や飾棚が、向島へ引移る時、永井と云う悪執事にちょろまかされたが、その永井も数年後、何者かに浅草で殺された事など、まさ子は悠り、楽しそうに語った。向島時代は、なほ子も・・・ 宮本百合子 「白い蚊帳」
出典:青空文庫