・・・「今日は?」「今日は河合の――お父さんは御存知ないでしょう。――僕と同じ文科の学生です。河合の追悼会があったものですから、今帰ったばかりなのです。」 少将はちょいと頷いた後、濃いハヴァナの煙を吐いた。それからやっと大儀そうに、肝・・・ 芥川竜之介 「将軍」
・・・ 河合栄治郎氏が余程以前アメリカに留学しておられた時分、友人であった一人のロシア生れの女性が、非常によく両性の友人としての交際に訓練されていて、そのために氏は多くのことを学び、男と女との間に友情がまっとうされるためには守るべきいろいろの・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・ 真個の女の人が扮しているのだから、洋服でも、河合武雄の着る洋服ではない型と味いとを見たい。 斯様な印象の後に来たので、「邯鄲」は、随分、お伽噺的な愛らしさで、目に写った。巧くこなしたものだと思う。色彩の調和が、気の利いた「犬」の舞・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・中小商工業者の破滅とラジオ、新聞をふくむ文化、学問への抑圧はどれも一つ同じ原因から発している。河合栄治郎の公判記録が、『自由に死す』というパンフレットになって刊行された。彼のような穏当な学究さえも彼の理性が超国家主義と絶対主義に服従しないで・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・この探求と再認識との要求は、一九三六年の夥しい、青年論・恋愛論となって溢れた。河合栄治郎氏は教育者としての見地から、今日における大学教育、教授の学的確信の失墜と学生間に瀰漫している、あしき客観主義、人間的意欲の喪失について論じ、ヒューマニズ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ ○イースター後、春、殆ど初夏の五月 鶴見氏との交際 河合、ハザノブウィッチ。学校のインディアンダンス。静けさを求めあこがれる心持劇しい。 五月二十日 Lake George に立つ。 Lake George で。 ○店主・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(一)」
・・・ 読者は本年新年号の『改造』に載っていた河合栄治郎氏の「教育者に寄するの言」という論文を記憶しておられるであろうか。この論文で河合氏は進歩的な一人の教授としての立場から、現代若いインテリゲンツィアとしての学生の気質を詳細に観察して否定的・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・家老河合小太郎に大目附が陪席して申渡をした。「女性なれば別して御賞美あり、三右衛門の家名相続被仰附、宛行十四人扶持被下置、追て相応の者婿養子可被仰附、又近日中奥御目見可被仰附」と云うのである。 十一日にりよは中奥目見に出て、「御紋附・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫