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・・・ ケーテは、ケーニヒスベルクの生れた家で肖像だの河港に働く労働者の姿だのを描きはじめた。今まで鉛筆でだけ描いていたケーテは、筆を使いはじめたが、そのときの教師はエミール・ナイデという故郷の町の芝居がかりの田舎画家であった。 そういう・・・
宮本百合子
「ケーテ・コルヴィッツの画業」
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・・・彼女が、もしプレーゲル河の河港に働く正直な人々の生活に何の同感ももち得ない娘であったならば、どこに後年の親愛な畏敬すべきケーテが存在したろう。何の動機で、心のすがすがしい若い医師カール・コルヴィッツと結婚出来たろう。彼女は画家たる前に、先ず・・・
宮本百合子
「まえがき(『真実に生きた女性たち』)」