・・・従って世間の輿論は沸騰するという時代があった。すると、私がずっと子供の時分からもっていた思想の傾向――維新の志士肌ともいうべき傾向が、頭を擡げ出して来て、即ち、慷慨憂国というような輿論と、私のそんな思想とがぶつかり合って、其の結果、将来日本・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・中流の少女が、自分の環境から脱け出て、荒々しく生活の沸騰している場面に取材したということも、一つの特色であった。そして更にもう一つの特色は、この小説で、作者自身が自分の生きかたと文学とについて、一種の公約をしている点である。作者は、それが公・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」
・・・ 雁金のかわりに、こけつまろびつしつつも、結局は行動性のチャムピオンであるそのような人物が試験管に投げこまれれば、久内はもっと沸騰し、上下に反転し、煙を立て、作者の知的追求に対しておびただしい多彩な醗酵の過程を示さざるを得なかったに違い・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ スペインが流血の苦難を通じて世界文化・文学の領域の中に新しい自身の価値を創造しつつ、同時にヨーロッパの文化的良心の沸騰する発露、更新力となりつつあることを疑うものは今日いないのである。『文芸』の「現在中国文学界鳥瞰図」「抗日作・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・三 生命全体の活動が旺盛となり、人格価値が著しく高まって来ると、そこにこの沸騰せる生命を永遠の形において表現しようとする衝動が伴なう。あらゆる形象と心霊、官能と情緒、運動と思想、――すべてが象徴としてこの表現のためには使役さ・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫