・・・そういう人が十万、十五万あればある意味では一種の殺人隊です。治安を守る人よりもあるときにおいて極端に治安を乱す人である。 そういうふうなことを、私どもの常識は平和とか基本的人権とかいうことの現実と結びつけて、直ぐピンと感じるような感覚を・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・も、それに対する殆ど痙攣的だった保身的批判理論も、どちらも、十五年たったきょう顧みれば、日本の治安維持法の殺人的跳梁に影響された現象だった。当時の権力はまんなかに治安維持法の極端な殺人的操法をあらわに据えて、それで嚇し嚇し、一方では正直に勇・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・何とかして悪法・治安維持法にひっかけようとしてそういう問題にからんで来たのです。ブルジョアの手先の諸新聞が「コップ」を日本共産党再建の中心のように書き立てた魂胆も同じくここにあります。文化団体は合法的でやッつける口実がない。だから、そういう・・・ 宮本百合子 「逆襲をもって私は戦います」
・・・三・一五の私たちへつたえる教訓は、一九二八年におこった大規模な共産党と共産主義者に対する弾圧は、これを機会に日本の治安維持法が改悪され、特高警察がおかれ、検事に思想係が出来たというだけのことではなかった。私どもがもっとも銘記すべきことは、こ・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
・・・女学校令というものが出来て、女子教育の普及を計ると云われたのは一八九九年のことであるが、その次の年政府は治安警察法第五条で女子の政治運動を禁止した。 日本の地平線をちらりと掠めた民主主義の黎明は、こうして短い歴史を終った。そして近代国家・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・戦争が不条理に拡げられ、欺瞞がひどくなるにつれて、日本じゅうの理性を沈黙させ、それをないものにしていた治安維持法が撤廃された記念すべき日も、近くふたたびめぐり来ようとしている。 わたくしたちは、こうして営々と三百六十五日を生きとおして今・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 日本の治安維持法は十七年間に十万人の犠牲を出して、一九四五年の秋、その血なまぐさい歴史を表面上まきおさめた。 この悪法が撤廃され、獄中の人々が解放された時、日本は一種の昂奮した状態におかれた。悪法犠牲者が、そのとき英雄と見られた。・・・ 宮本百合子 「行為の価値」
・・・前年五月中旬検挙された百合子は、十月下旬治安維持法によって起訴され、市ヶ谷刑務所未決に収容された。一九三六年一月三十日、父中條精一郎が死去した。百合子は五日間仮出獄した。ふたたび市ヶ谷にかえり予審中、二・二六事件が起った。三月下旬、保釈とな・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ことごとく、その種のモティーヴに立ち、作品の本質も戦争による人民生活の破壊、治安維持法が行って来た非人間的な抑圧への抗議であった。それぞれの角度から日本の民主革命に結びついた。「五勺の酒」はこれらの作品のなかで独特な意味と問題とをもつ作品で・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・荒々しい条件におかれた自身の荒々しい所行の物語といっしょに、恐怖をもって臆測されている北鮮の治安が実際にはよくて、保安隊の若もの、土地の人々の親切、ソ同盟の兵士の素朴な人間ぽさなども、それがそうであったように語られている。北鮮の新幕から三十・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
出典:青空文庫