・・・ 二葉亭の頭は根が治国平天下の治者思想で叩き上げられ、一度は軍人をも志願した位だから、ヒューマニチーの福音を説きつつもなお権力の信仰を把持して、“Might is right”の信条を忘れなかった。貴族や富豪に虐げられる下層階級者に同情・・・ 内田魯庵 「二葉亭追録」
・・・内に私徳の修まるあれば、外に発して朋友の信となり、治者被治者の義となり、社会の交際法となるべし。 けだし社会は個々の家よりなるものにして、良家の集合すなわち良社会なれば、徳教究竟の目的、はたして良社会を得んとするにあるか、須らく本に返り・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・即ち朋友に信といい、長幼に序といい、君臣または治者・被治者の間に義というが如く、大切なる箇条あり。これを人生戸外の道徳という。即ち家の外の道徳という義にして、家族に縁なく、広く社会の人に交わるに要用なるものにして、かの居家の道徳に比すれば、・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫