・・・でコルベールがいう一寸した科白を、ある日本の作家が女性の洗練された話術の感覚の見本としてほめていたが、果してそれをすぐコルベールの身についたものということが出来るだろうか。有名だった「夢見る唇」の中でベルクナアが妻を演じて、苦しいその心のあ・・・ 宮本百合子 「映画女優の知性」
・・・黒と白だけで全部を表現する版画家の人生に対する感情にさまざまな点から新しい興味を喚起されたし、文化の程度の低い民族あるいは社会層の者ほど原色配合を好み、高級となり洗練された人間ほど微妙な間色の配合、陰翳を味わう能力を増すといわれているありき・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・能や仕舞は庶民生活の中から自然にわき出した動作が要約され芸術化されたものではなくて、貴族生活、武士生活の感情と思想とが洗練し集約しつくした動きに象徴されたものである。習ってゆく道すじから云うと、能や仕舞ほど形式への絶対の服従を求める芸は殆ど・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・其処で、智的で洗練された情緒の所有者である米国の女性は、正当に伸張された法律的、政治的権利を保有して、健全な美くしい肉体と倶に、総ての国家的文明に貢献して居ると申す事になるのでございます。 私は決して、此の言を絶対に否定は致しません。然・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 一九三〇年頃のヴェラ・インベルは洗煉された一人のソヴェトの女詩人で、未来派出身らしいスタイルを持った才女であった。 彼女の作品は気が利いていた。フランスの匂いがした。けれども率直にいってそれ以上の何ものであったろうか。今次大戦が始・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・「でも×さんという方は洗練された、都会人らしい神経の方ですね、いろいろな場合、私の心持を本当によく劬って下さるのが分ります」「書くものも見ていただきなさるの?」「いいえ、書いたものは一度もお見せしません」 芸術の上で、彼の弟・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
・・・西洋の女の服装が、ただけばけばしいばかりのものでないことは、灰色の美しい扱いかた、黒の微妙な調和の手法を、日本の近代人はかえって西欧の洗煉された色感から学んでいることを、女性は知っているのである。「日本的性格」の筆者が、近代の日本人が、日本・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・ 魂が洗練されない事は恐ろしい。人にも、自分にも沢山の見える見えない悲劇を与える。自分の為に或る幾つかの魂が苦しみ、歎き、沈黙の忍従に頭垂れていても、知らなければ解らない。無智は不明は、敵意の無い挑戦者である。 魂の深みを顧みて・・・ 宮本百合子 「追慕」
・・・今に、その点が洗練されたら、持ち前のよいものが純粋に立派に輝き出すと信じます。〔一九二五年十月〕 宮本百合子 「読者の感想」
・・・ 随分私共もおどけた事を云ったり仕たりして笑いこけるけれ共、始終上品な洗練された滑稽と云う事を各々に気をつけて居るので、子供などに聞かせたくない様な文句を高々と叫んで居るのをきくと恥かしい様になって、種々な世の中の事に疑問を多く持ち出す・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
出典:青空文庫