・・・「最も活動する自然力を支配する人間は最も冷静だから安心し給え。」「豪いよ。」「勿論! そこで君のいう所のエンとは?」「帰ろうじゃアないか。帰宿って夕飯の時、ゆるゆる論ずる事にしよう。」「サア帰ろう!」と甲は水力電気論を懐・・・ 国木田独歩 「恋を恋する人」
・・・ 人格という意味をかかる共同人間の意味に解するならば、人格主義はその独善性から公共に引き出され、社会活動がその内面性の堕落かの如き懸念から、解放されて社会的風貌を帯びて行くであろう。一方では「社会公共の幸福」なる意味も、第一にその社会公・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・黒河からやってくる者たちは、何物も持たず、何物をも求めず、ただプロレタリアートの国の集団農場や、突撃隊の活動や、青年労働者のデモを見たいがためにやってくる。そういう風に見える。しかし、なかには、大褂児の下に絹の靴下を、二三十足もかくしていた・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・前からいッて来た通り活動の世界だからネ、どうしても螺旋的の運動に違いないのサ。畢竟は螺旋的だから運動が千殊万差の異様をなして長く続くのサ。ソコデ人間の世界に生れて来るのも単に螺旋的にヒョコリと出て来るのサ、そうして人間の意思動作もすべて螺旋・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・種保存の本能が、大いに活動しているときは、自己保存の本能は、すでにほとんどその職分をとげているはずである。果実をむすばんがためには、花はよろこんで散るのである。その児の生育のためには、母はたのしんでその心血をしぼるのである。年少の者が、かく・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・青バスの後に映画のビラが貼られているのを見ると、一緒の同志が「出たら、第一番に活動を見たいな。」と云った。 時代錯誤な議事堂の建物も、大方出来ていた。俺だちはその尖塔を窓から覗きあげた。頂きの近いところに、少し残っている足場が青い澄んだ・・・ 小林多喜二 「独房」
・・・池の茶屋ではまた一日の活動が始まりかける頃であった。朝早く魚河岸の方へ買出しに行った広瀬さんも金太郎もまだ戻って見えなかったが、新鮮な魚類を載せた車だけは威勢よく先に帰って来て、丁度お三輪が新七と一緒に出掛けようとするところへ着いた。「・・・ 島崎藤村 「食堂」
・・・また芸術は必して直接にわれらの実行生活を指揮し整理する活動でもない。六 余論としてここに一言を要するのは、史上にいわゆる人生観上の自然主義である。過去において明らかにかような名辞を用いたのは、私の知る限りでは、Profess・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・しかし何者かがその体のうちに盛んに活動している。右の手で絶えず貨幣をいじって勘定している。そして白い、短い眉毛の下の大きな、どんよりした、青い目で連の方を見ている。老人は直ぐ前を行く二人の肘の間から、その前を行く一人一人の男等を丁寧に眺めて・・・ 著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外 「鴉」
・・・その病院は横浜と東京とにたてられて、のちには日本人の手で活動しました。その他、ニューヨーク市では、「一分早ければ一人多くたすかる」という標語をかかげて、市民の間からたちまちに一千万円以上のお金をつのっておくりとどけました。サンフランシスコ市・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
出典:青空文庫