・・・の心持という抽象の観念ではなくて、そういう女性一般の心持が具体的に表現され活用されてゆく過程で、社会的により進歩した形として婦人の貢献の条件について考慮してゆく施設が在った方がいいだろうという立場からであったろうと思う。 婦人を男と区別・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・下山氏の死が、自殺か他殺か、明らかにされない条件は、あらゆる暗示をこめて反民主的、反労働者的な疑惑に人々をひきこむために活用されている。ドイツの国会放火事件ばかりでなく、世界の人民のたたかいは、いつもデマゴギーと挑発のわなをしむけられる。日・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・――まして代議士のやりあいではなく、文学について語る場合、平野氏が、軌道性なんとは変だ、おかしいと云いながら、評論家としての心の働きを、強引なその変さの活用に駆使して、わたしという生きているものの体の上に、あれだけ縦横な軌道を敷いたことは、・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・ 私が、旧作家同盟に参加した頃、或る種の人達は、片岡鉄兵がしたと同じように私も早速ブルジョア・インテリゲンツィア作家として持っていた文学上の腕をそのまま活用して、いろいろな作品を書いて行くことと予想したらしく考えられる。そのとおりに実際・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・ミッション・プレス、その他切支丹関係の書類は、歴史的に興味深いばかりでなく、芥川氏が数篇の小説中に巧に活用し、その芸術的効果を高めているような一種独特な用語、文体で書かれているため、文学的な面白さも充分ある。「あるじぜすきりしと」「びるぜん・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・当時の社会が婦人の登場を許していなかったあらゆる政治的関係、役所関係の間へ、ナイチンゲールは彼女のあらゆる条件を活用して、ハーバートを動かし、バーネー卿を活動させた。ナイチンゲールに役立とうとして仕事をはじめたこれらの人々は、やがて真剣にそ・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・ もしもコンミニストが、此の文学の、恰も科学の持つがごとき冷然たる素質を排撃するとしたならば、彼らの総帥の曾て活用したる唯物論と雖も、その活用させたる科学的態度を、その活用なし得た科学的部分に於て排撃されねばならぬであろう。・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
・・・これは恐らく二千年の歴史を持った東洋画の伝統がしからしめるところであって、この特長を活用するところに日本画家の誇りも存するのであろう。洋画家の理想画や歴史画が幻想の不足のために滑稽に堕している間に、日本画家がこの方面である程度の成功を見せて・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・また日本絵の具の性質をいかに活用すべきかもここに暗示せられている。が、こう思いながらも、さらに遠のいて観察すると、画面全体には光も空気も現われていない。個々の麦を描く場合に成功したことも、画の全体にとってはほとんど効果がない。写実として失敗・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
・・・彼らを理解に導いて行く機会と設備とをさえ整えれば、――そうして国家が精神的才能の活用法に十分心を用うれば、――平民主義の下にもより美しい芸術の時代が現出し得るだろう。――この民衆教化が第二の任務である。 しかし現在露国の一部労働者が芸術・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫