・・・この時期に、日本の文学には、第一次欧州大戦後の社会事情の大変動につれて、新興の文学運動がおこり、従来の諸流派とは全然異った文学の世界を示しはじめた。これまでの純文学が一個人内面的経緯を孤立的に追求して来たのに対して、新たな文学は、この社会に・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・おそらくは幼いときに聞いた宋儒理気の説が、かすかなレミニスサンスとして心の底に残っていて、針路をショオペンハウエルの流派に引きつけたのであろうか。しかし哲学者として立言するには至らなかった。歴史においては、初め手を下すことを予期せぬ境であっ・・・ 森鴎外 「なかじきり」
・・・どの流派を追い、どの筆法を利用するにしても、要するに洋画家の目ざすところは、目前に横たわる現実の一片を捕えて、それを如実に描き出すことである。彼らにとって美は目前に在るものの内にひそんでいる。机の上の果物、花瓶、草花。あるいは庭に咲く日向葵・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
出典:青空文庫