・・・出版綱領実践委員会が集って日本の出版の浄化のために幾たびか協議しました。その過程で非常に注目すべきことがあった。エログロ出版物を駆逐するために、警察力を使えということ、新しい取締法律をつくれという意見が伝えられました。しかし、猥褻罪を取締る・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・によって浄化された幼児の稚い美くしさはまぼしいほどに輝き渡る。 只見るさえ黄金色の輝きの許に有るものは美くしいものをまして照されてあるものはすべてのものからはなれて人間界からはなれた或る国に行って居るものだと信じられて居る死人である。・・・ 宮本百合子 「悲しめる心」
・・・ 自分の良人を深く深く愛し、謙遜に、恭々しく、出来るだけの努力でその愛を価値高い、純粋なものに浄化させて行き度いと希う自分は、最も計り難い、最も絶対な一大事として、愛する良人との死別ということをも考えずにはいられなく成ったのです。 ・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・貴族の夫人、娘としての周囲の日暮しにも批判をもち、子供を生み、それを辛苦して育てることばかりが、性の放逸と女の下らなさを浄化するという風に考えていたのであった。社会的な規模で婦人の生活は考えられず、ジョルジ・サンドをも嫌悪した。この婦人に対・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・ 万人は万人円らかな愛と、浄化された本然とを求めて居る。 けれども、其なら絶間ない努力と、絶間ない祈りとの熾な焔に、無残にも其を打消す汚れを浴せ掛けるのは誰だろう? 其も亦同じ祈る彼等、努力する私共である。 何故、私共は、あらゆ・・・ 宮本百合子 「無題」
・・・しかし何等外的な目的を持たないで、自分自身を築き上げ、時代と永遠とに対する自分達の個人的関係を浄化しようという欲求」に立つ詩人であり、生活の核心に近づくため「あらゆる好意とよろこびの核心は愛であること」を語る詩人であることを明らかにした。当・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・私は自分に浄化の熱欲と道徳的疳癪とがあるゆえをもって、自分のメフィストを跳躍させてよいものだろうか。それは自己と同胞とに対する愛の理想を傷つけはしないだろうか。私は彼らの弱所を気の済むまで解剖したところで、どれだけ自分の愛を進め得たろうか。・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫