・・・ 青春というものは誰にとっても経過する人生の一時期であるけれども、その経過のしようによっては、歴史が全く夥しい人々の青春を単に消耗するという結果になる。この事実を、人々はどう考えているだろう。一人一人の青春のおのずからな経過と歴史の力が・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・ 骨格逞しい丈夫な民衆の上にあらゆる不如意、不潔、消耗がある。然し彼等はその底をくぐって生きぬくであろう。 民衆のこの生活力の上に立つ限りСССРはアメリカの僧侶が希望する以上に強靭な存在であるのだ。 ファイエルマンは明りを暗く・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・ ――鉄、石炭、麦、靴のような消耗品に至るまでソヴェトはすべての生産を計画的にやっている。映画みたいな芸術的生産も大体一年に何本、どういう種類のものをつくると予定してやっている。 ――芝居の方はどうなんだ? キノと同じかい? ―・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・個人が自分の不得手な表現を強いてするということは大変な精力の消耗だから。 ソヴェトが社会主義社会を建設しようとする大目的に向って基本的に決定している指導方向は断然一つだが、その中にある個性の尊重ということは非常に注意してやっている。活か・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・むごさという感覚をとりおとした人間消耗の気風には承服しないでいるのである。 病気は病気であるという事実にたって処理しながら、わたしが仕事を中絶しないのは、階級的な「作家の資格において」民主革命の課題は文学の仕事そのものによってどうこたえ・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・この精神的影響の上に数万円のハガキ代と、運動費、夥しい労力の消耗との結果、新たに八つの俗地が提灯持ち的に紹介されるに過ぎず、結局日日新聞の広告が全国的に最も有効に行われた事実に帰着するのみだとすると、抜け目なき脳味噌よ、悪魔に喰われろ、と云・・・ 宮本百合子 「夏遠き山」
・・・又、現代社会の経営的機構は一個のXなる青年の生涯を冷酷な一部分品、しかも消耗したら手軽にいくらでもとりかえることの出来る部分品としてだけ扱っているので、謂わばこの世に自分という人間の生きているという固有名詞をせめて印刷物の上にでも主張したい・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・アジアにおける資本主義国として、西欧資本主義の利益探求の方向に同調し、その範囲で日本の資本主義を強化してゆくために、兵としての人民は重要な軍需消耗品である。自身の繁殖力によって消耗を自動的にカバーしてゆく消耗品である。日ごろは人民のつつまし・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・日大は、古橋さんというポスターのおかげで、大分便宜を得ているのだし、同窓生たちにとっては、われらの青春のチャンピオンであるわけだから、みんなが協力して、せめて消耗にふさわしい食事ぐらい何とか工夫はできないものかしら、というわたしの言葉に、古・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
・・・の幸福と安逸とのために自分のすべてを消耗しているものにとっては実に明らかな事実について、むずかしい言葉でこんな大きい本を書く必要はなかったという風に、ゴーリキイには考えられた。スミスが提出する経済学の命題は、生活から直接獲得されたものとして・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫