・・・三つの生活様式の中間色をなす、過渡期の生活が起滅する間に、新しい生活様式が甫めて成就されるであろう。歴史的に人類の生活を考察するとかくあることが至当なことである。 しかしながら思想的にかかる問題を取り扱う場合には必ずしもかくある必要はな・・・ 有島武郎 「広津氏に答う」
・・・ されど、天命の寿命をまっとうして、疾病もなく、負傷もせず、老衰の極、油つきて火の滅するごとく、自然に死に帰すということは、その実はなはだ困難のことである。なんとなれば、これがためには、すべての疾病をふせぎ、すべての災禍をさけるべき完全・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・ 左れど天命の寿命を全くして、疾病もなく、負傷もせず、老衰の極、油尽きて火の滅する如く、自然に死に帰すということは、其実甚だ困難のことである、何となれば之が為めには、総ての疾病を防ぎ総ての禍災を避くべき完全の注意と方法と設備とを要するか・・・ 幸徳秋水 「死生」
・・・建物を破壊しないで人間はセン滅するから原子爆弾よりも有効であるなどと人間ならば言いかねる言葉を日本の新聞は書いております。しかしまた同じ日本の新聞はほんの小さく世界戦争の危機は迫っていないという大統領に立候補するスタッセンの言明をのせていま・・・ 宮本百合子 「世界は平和を欲す」
・・・生あるものは必ず滅する。老木の朽ち枯れるそばで、若木は茂り栄えて行く。嫡子光尚の周囲にいる少壮者どもから見れば、自分の任用している老成人らは、もういなくてよいのである。邪魔にもなるのである。自分は彼らを生きながらえさせて、自分にしたと同じ奉・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫