・・・ ゆえに、子女の養育に注意する人は、そのようやく長ずるにしたがって次第に世間の人事にあたらしむるの要用なるを知り、あるいは飲酒といい演劇といい、謹慎着実なる父母の目には面白からぬ事ながら、とうていこれを禁ずべきに非ざれば、この好むところ・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
・・・という政治的キャバレーをひらいて、おなじ名の諷刺劇を上演したり、娯楽と宣伝とをかねた政治的集会を催し、演劇的才能と行動性とを溌剌と発揮して活動しはじめた。 ところが二月二十七日の夜、ドイツ国会放火事件がおこった。真の犯人はナチスであるが・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・では、ソヴェト演劇においてこれまでほとんどつかわれなかった子役の形でピオニェールを出し、ごく自然な明るさで、農村と都会の集団農場中央との連絡として重大な役割を演じさせている。 これなども劇の現実性を高めている。 五月二日ソヴェトの勤・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ソヴェト同盟は新しい社会的土台において諸芸術をめざましく開花させたが、各部門の発達のテンポを見ると、文学、演劇が一番早くある水準に達した。音楽、美術はそれよりおくれたという実際の経験がある。騒音の激しい、人のざわめき、声々の多い場所で働いて・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・そのころ、あなたのラーゲリでは音楽グループは、どんなことをしていたでしょう。演劇グループはあったでしょうか。アクチーブの人たちは創作コンクールなどにどのように活動したでしょう。わたしたちには興味のふかい、知りたい情景であり、内容です。・・・ 宮本百合子 「結論をいそがないで」
この間田舎へかえる親戚のもののお伴をして珍しく歌舞伎座を観た。十一月のことで、序幕に敵国降伏、大詰に笠沙高千穂を据えた番組であった。 この芝居をみていて深く感じたことは演劇のとりしまりや自粛がどんなに芸術の生命を活かす・・・ 宮本百合子 「“健全性”の難しさ」
・・・ この表でも分るように、例えば婦人の文盲率の最も高いトルクメン、キルギース、ウズベクでさえ、一九三〇年の夏、モスクワで演劇オリムピアードが開催された時はどうだったろう。これらの民族の国立劇団が、自分たちの地方の生産、これを中心として行わ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・映画は毎年大体定められた生産計画によって生産されている。演劇は上演目録の計画的選定で上演されている。文学作品の生産ばかりは、個々の作家の勝手で行われて来た。めいめいの作家が、てんでの思いつきでつかまえた題材で書きたいときに書いていた。果して・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・そこで彼女は在来のあらゆる演劇術を投げ捨てて、何事を現わすにも新しい方法を取った。 元来芸術家という者はその人に独特の色があるとともに一般的な性質がなければならない。そして一般的な所は伝統に従って表現し、独特な所には新しい表現法を用いる・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
・・・これらの演劇形態について詳しい知識を有する人が、一々の動作の仕方を細かく分析し比較したならば、そこにこれらの芸術の最も深い秘密が開示せられはしまいかと思われる。 一、二の例をあげれば、人形使いが人形の構造そのものによって最も強く把握して・・・ 和辻哲郎 「文楽座の人形芝居」
出典:青空文庫